呼吸器専門医A クリニックの設計に悩む

さて開業地が決まると、次はクリニックの設計に取りかかりました。設計をお願いしたのは総合メディカルグループの設計部門であるソムテックさんです。クリニックや病院の設計の実績が多い設計事務所です。クリニックモール内での開業ということで一棟建築ではないためにいろいろと制約が多く、決められた面積でどのような設計にすれば、働く方にもまたクリニックを訪れる患者様にも気持ちのよい場所になるか悩みが多いところですが、①患者様が受診しやすいこと、②スタッフと患者様の導線が交差しないこと、③一般的な診療の流れである「受付」➡「待合」➡「診察」➡「検査」➡「検査結果、診断、次回の受診の説明」➡「会計」がスムーズにできることを確保した設計にするためにソムテックの設計担当の方とも何度もディスカッションを重ねました。実は呼吸器専門医Aには医師である娘ともう1人一級建築士で建築設計のプロである息子がおります。息子の主な設計対象はビルなど大型の建物ですが、過去には東日本大震災の震災復興住宅や薬局、老人保健施設の設計経験もあります。一級建築士の試験は合格率が10%程度、つまり受験者の10人に1人くらいしか受からない狭き門ですが、一次試験に相当する学科試験と二次試験に相当する製図試験があり、その二つに合格しないと免許が取得できず、本免許の取得は実務経験が必要です(近年実務経験なしでも受験はできるようになりましたが、試験に合格しても実務経験を満たした後で初めて免許の交付を受けることができるのは従来と同じです)。製図試験では「老人保健施設」や「美術館」そのほか、多彩な用途の建物の設計が課題として出題されるためにクリニックの設計に関しても造詣が深かったので、息子のアドバイスなども得ながら進めました。待合の広さ、トイレのバリアフリー化、車椅子が方向転換できるスペースが必要であることやオストメイトへ対応するためには何が必要かなど、有用な情報をもらいました。

さて間取りが決まれば内装などを決める段階に進みますが、このあたりが夢が膨らみ一番楽しいプロセスでした。

そして2023年4月にやっと設計が決まりました。パースをお見せします。

クリニックの俯瞰図のほぼ完成バージョン

これはクリニック全体を俯瞰したもので、部屋の配置や床や壁の色も最終決定のものとほぼ同じです。X線検査室は広めの設計で、このパースではCT装置が描きこまれていますが、開院当初はCTを導入せず、需要を見て(間違いなく必要と思っています)設置する計画です。そのためスペースだけでなく、床の耐荷重や電源の確保を当初計画から盛り込んでいます。

クリニックの玄関側

さてクリニックの外観です。モールの共用廊下側から玄関を見たところです。外壁は「海」からの青みがかった少し落ち着いた色でガラス部分を多く作り内部が明るくなるようにしました。

受付 後ろの壁の絵に注目

玄関を入って受付と待合、診察室の入り口のパースです。見てほしいのは受付の後ろの壁に、前回提示したクリニックのロゴマークが貼ってあり、もっと目を引くのはその横のハートの絵かと思います。これは現代のポップアートの代表的な存在であるロメロ・ブリットさんの作品の「フロー(ハート)Ⅲ」です。

ロメロ・ブリット フロー(ハート)Ⅲ

気分がウキウキするような作品ですよね。クリニックの玄関を入るとまず、この「フロー(ハート)Ⅲ」が患者様をお出迎えします。いろいろな健康上の悩みを抱えて私のクリニックへこられた患者様に少しでも癒しになってくれればと期待しています。ロメロ・ブリットが気になった方はこちらものぞいてみてください。

https://hopebearinc.com/artist/romerobritto/

(2023年4月15日に記載)