山梨の中村キース・ヘリング美術館へ行ってきました~アートのもつメッセージ性、マイノリティーへの偏見・差別との戦い、登山を思った日

山梨県の建築s紹介のサイトを見ていて、まだ知らない美術館があることに気づきました。それが中村キース・ヘリング美術館です。

中央道小淵沢インターから近いところなので行ってみました。キース・ヘリングはアンディー・ウォーホルと並ぶポップアートの巨匠です。誰でも一度はネットなどでその作品を見たことがあると思います。

キース・ヘリングはユニークなその作風でよく知られていますが、それだけでなく、マイノリティーへの偏見・差別と戦い続けた人でもあります。彼自身はHIV感染者であり、1990年に31歳の若さでこの世を去っています。当時はAIDSに対する偏見・差別の嵐が世界中に吹き荒れていました。AIDSだけでなく、LGBTと言われるマイノリティーへの差別は今日でも根強くあり、現代ではこれにQueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング)の頭文字QをつけてLGBTQと称されます。Qは「自身の性自認性的指向が定まっていない人」という意味です。

私自身1999年に日本エイズ財団からの派遣でカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)に国際医学プログラムエイズ臨床トレーニング(IMOACT)へ参加し、短期間の研修を受けました。研究の進歩により当時複数の抗レトロウイルス薬の併用による治療が始まり、エイズは不治の病ではあるが死なない病になっており、エイズの患者さんをどのように社会がサポートしていくかを考える時代になっていました。私たちもIMPACTのレクチャーで「Living with AIDS」という言葉を教えられました。このときLGBT運動のシンボルえあるレインボーフラッグの存在を初めて知りました。サンフランシスコではそれよりもずっと前からLGBT運動は市民権を得ていたのです。

サンフランシスコのLGBTコミュニティの中心地のカストロストリート
レンボーフラッグが掲げられています

キース・ヘリングの作品では、「見ざる、聞かざる、言わざる」をシンボルにしたものがあり「無知だから恐れる」「何も声を上げないことは死んでいるのと同じ」と書かれていて、エイズとの戦いに立ち上がるという強いメッセージが込められていて、心に残りました。 

かれの先品は癒やしにもつながり、例えばニューヨークの有名なマウントサイナイ病院の小児病棟には彼の壁画が飾られていました。アートセラピーという点でも今日研究の対象となっているようです。それらのバックグランドを知らなくても、ポップな作品を楽しむことは十分にできます。

ニューヨーク マウントサイナイ病院 小児病棟に描かれた壁画

ウーちゃんも楽しみました。私のクリニックでもキース・ヘリングの作品が患者様をお迎えするようになる予定です。

ところで今回訪れた中村キース・ヘリング美術館ですが、東京藝術大学の教授を務められた北川原温氏の設計によるものです。北川原氏は東京藝術大学の出身です。普段見慣れている建築は工学系出身の人の設計が多かったので、それとはまた異なる性格の設計かなと感じました。ポップアートの巨匠の作品を展示するのにふさわしいのかも知れませんね。  

それともう一つ、山梨に行く楽しみのひとつに山の景色を楽しむがあります。若い頃、山登りをしていました。毎年夏休みは北アルプスへ行っていました。子供が小さいときも私の趣味に付き合わせて、木曽駒、北八ヶ岳とか西穂高独標、立山に息子と登りました。山梨にはそれよりもずっと近い南アルプスがあります。今日は天気がよくて、南アルプス北岳も甲斐駒もよく見えました。ただし、南アルプスは敬遠していました。というのは山が深く登山口までのアプローチが長いこと、さらには登山口からの標高差が大きいためにさすがに家族を付き合わせるのは無理といった理由からです。西穂高も木曽駒もロープウエイでのアプローチが可能という利点があり、家族でも上れます。

車窓から見た南アルプス 右側のピラミダルな山が甲斐駒ヶ岳

八ヶ岳北八ヶ岳(横岳、縞枯山)はロープウエイがあるため比較的楽です、ただし、楽と感じるのは私だけで、登山ガイドに「初心者向けコース」と書かれていても、付き合わされる家族は決して楽ではなかったと思います。西穂高は一回だけ上高地から日帰りで上ったことがあります。標高差1400メートルくらいで、上高地からだと見上げるほどの標高差です。ここに当時小学校2年生であった息子と登りました。翌年は室堂から立山縦走(雄山、大汝山、富士ノ折立、真砂岳別山、剣御前から雷鳥沢)をしました。息子はついて行けなければ死ぬかもしれないという恐れがあり必死で付いてきたと後で語っていました。結構夏休みがトラウマになったのかも知れません。息子は山が嫌いになってしまいました。車窓から見える南アルプス八ヶ岳を見てそんなことも思い出した1日でした。

八ヶ岳連邦