今年もでんすけすいかが届きました、それと歯のホワイトニング始めました

今年も北海道当麻町ふるさと納税の返礼品のでんすけすいかが届きました。毎年大人気で早めに申し込まないと売り切れ必至でした。我が家の子達も皆大好きです。ウーちゃんが代表で入刀しました。とっても甘くみずみずしくておいしかったです。

でんすけすいかを前に「待て!」

それとは別ですが歯のホワイトニングを始めました。コロナ前のようにマスクなしで診療できる日が今後来るかは定かではないですが、開業するに当たってサービス業ということで、「顔の印象は歯で決まるのよ、歯で」というCMに乗せられた訳ではありませんが、もともと自分はエナメル質の減形成のため象牙質の色が透見されやすく、いくらブラッシングしてもステインではないので黄色に見えるので、開業前にホワイトニングをやろうとずっと思っていました。実際にはマウスピースを作成してホワイトニングジェルをつけます。当然保険適応外なのでそれなりに費用負担があります。家で毎日行うホームホワイトニングですんでお2週間かかり、ホワイトニング中は着色のもととなるコーヒーやカレー、そのほか色の濃い食べ物は控えるということで、こちらの方が辛いですね。

オーダーメイドのマウスピーズ

ホワイトニングジェルをつけてマウスピースを装着したところ、白いのがジェルです。
汚い写真で申し訳ないです。

 

ハッスルバイアス、ミミカー、診療終了時間間際の飛び込み「あるある」

ある日の午後、16時半の診療終了時間後に1週間前からの咳の訴えで患者さんが飛び込んで来ました。50代の男性で過去喫煙者、痰は少なく、熱はなく、既往や咳の性状、随伴症状など原因を示すような特異的なことはありませんでした。聴診でも異常呼吸音はなく、SpO2(指で計る血中の酸素飽和度、コロナ下で一般の人も通販サイトで測定器=パルスオキシメーターを購入した方も少なくないと思います)の低下もありませんでした。ご本人も咳は辛くなく、多少気になる程度とのことでした。出始めから1週間の咳は急性の咳に該当し、最も多いのは感染性の咳とされています。臨床推論ではhassle bias(ハッスルバイアス=自分が最も楽に処理できるような仮設のみを考える)が知られています。このような診療終了間際や終了後など(特に週末)の状況で陥りやすいバイアスです。ハッスルバイアスに陥った場合には、この患者さんに対しても最も軽症な原因として非特異的な感染性咳嗽(風邪の咳)と考えて鎮咳薬だけを処方し帰宅頂くところでした。胸部レントゲンを実施したのは「有意所見はないだろう」との事前予測のもとです。ところが驚いたことに、前年の検診では認めなかった浸潤影を右中葉に新たに認めました。

(左)昨年の検診レントゲン (右)今回受診時のレントゲン。右肺中葉に浸潤影を認めます。

症状は必ずしも肺炎には合致しません。この時点で17時を回っていました。クリニックの制約の中では、これから採血を行って炎症所見を確認する時間はありません。さてどう対応すればよろしいでしょうか?

時間的制約があり肺炎以上に可能性が高い代替診断がなかったために、肺炎(感染に伴う)として治療的診断を開始することとしました。肺炎としては臨床像は非定型肺炎を思わせますが、細菌性肺炎をカバーする必要がないという根拠がないために細菌性肺炎、非定型肺炎双方をカバーしうる初期治療薬としてレボフロキサシンを選択しました。この選択には異論もあるでしょう。「おまえが書いた本(呼吸器感染症の診かた考え方 ver.2)には抗酸菌感染が否定できければキノロンは使うなと書いてあるじゃないか!」と言われそうです。一方で症状が乏しいこともあり肺炎と似た影を出す他の病気(ミミカー)の可能性も考える必要性も認識しておく必要があります。このため、この日は抗菌薬を処方し、血液検査とCTを行い、結果は後日確認するということにして帰宅していただきました。翌日には血液検査とCT結果を確認。末梢血白血球数が14,000と上昇し、好中球が80%以上、血清CRPが8と高値を示しており、細菌性肺炎に合致すると判断しました。ところがCTを見ると右中葉に浸潤影は確かにあるのですが、浸潤影に隠れるように丸い腫瘤影が同居していました。

胸部CT;右中葉に肺炎の浸潤影と内側に肺がんの丸い陰影を認める

初診から3日後に再診に来てもらいました。白血球は正常化しCRPも1.5程度まで改善していました。抗菌薬は効いていると判断できましたし、レントゲンをフォローしたところ浸潤影は消えかけていた分逆に腫瘤影が明瞭に認められるようになってきました。肺炎のミミカーではなく、実際には肺がんに続発した肺炎と判断し、気管支鏡検査を含め肺がん診療が可能な病院へ紹介しました。
今回の診療ではともすればハッスルバイアスに陥りがちな診療時間終了後の飛び込みで、予想外の肺炎が疑われる陰影にこれまた予想外の肺がんが隠れていました。とても教訓的な経験だったと感じます。

AIに思うこと つづき

5月から市の肺がん検診の一次読影始めました。バイトでなくて、自分の勤務先の川崎のクリニックで撮影された分だけですが、週三回、一度に100件以上読みます。PACSのお陰で比較読影は楽ですが流石に100件以上の一気見は疲れます。開業後の検診受注のためのトレーニングを兼ねてやってます。画像診断AIはすでに実用化されていて、結節影の検出は熟練した放射線診断医よりも優れていることが論文でも報告されていることは前回書きましたが現時点ではAIによるセカンドオピニオンという位置付けです。本邦でも胸部X線画像病変検出ソフトウエアである「CXR-AID」は認定されており特定機能病院ではAIの加算が取れますが、まだ一般の医療施設では加算が認められていません。現在の私の勤務先にもまだ入っていません。私が開設するベイフロントクリニック南船橋には「CXR-AID」を導入しますが、早く加算の対象施設を広げて欲しいものです。

 

ところでAIといえば、これもAIです。

勤務先のクリニックから川崎駅までの帰り道に大型商業施設のラゾーナ川崎があり、そこの2階にラボツトカフェがあります。この子(ラボット)達もAIです。実物はかなり大きく、日本語を話す訳ではありませんが、それぞれちがう個性が宿る瞳や声も、人を覚えてなついてくれる頭のよさもAIです。開業してまた単身赴任になったら、一緒に暮らそうかなって思わず考えてしまいそうです。癒やされますよね。

 

AIと医療~Web問診、AI問診、AI画像診断に思う

チャットGPTが話題になっていますが、医療の世界でもAIの利用がいろいろと試みられています。画像診断と問診でもAIが利用されるようになってきました。

例えば胸のレントゲン写真で肺がんを疑うような丸い影(これを結節影といいます)が、AIを用いることで見落としが減るのでしょうか。現在日本人の死因の第1位が肺がんであることはご存知だと思います。部位別で見ると男性の第1位、女性の第2位が肺がんです。ちなみに女性の第1位は大腸がんです。肺がん検診は多くの自治体で行われているのは、肺がんを早期に見つけることが目的です。


AIを併用した放射線科の専門医とAIを併用しない放射線科専門医で肺がんを疑わせる結節影の見つける精度を比較した研究があります。
2020年7月から2021年12月の間に検診センターで胸部レントゲン撮影を受けた10,476人の参加者が登録され、AI群と非AI群に無作為に割りつけられ13 ~ 36 年の経験を持つ3 人の放射線科医のうち 1 人が、AI の 結果を参照しながらX 線写真を読影。 結節影が実際にあるかどうかはCT スキャンで確認したというもので、AI群では非AI群と比較して肺結節影の検出率が2.4倍向上したことが示されました。結節影は肺がんとは限らないのですが、悪性の結節影の検出率も、AI群の方が高率でした。(Ju Gang Namほか.Radiology Vol. 307, No. 2: Published Online:Feb 7 2023. https://doi.org/10.1148/radiol.221894
この論文では結節影だけに限っていて「ある、なし」の判定での評価です。現在の肺のレントゲンの診断でのAIの立ち位置としてはAIが単独で診断するのではなくレントゲンを見る医師(読影医)にセカンドオピニオンとしてAIが解析結果を示すというもので「AIによる支援」というものです。
一方で胸部レントゲンではがんを疑う結節影だけでなく、肺炎や肺結核肺気腫間質性肺炎気胸などいろいろ異常な影を診断する必要があります。AIによっては陰影が「ある、なし」だけでなく質的な診断もできる様になってきました。私のクリニックも富士フィルムの画像診断システム(PACS)に胸部X線画像病変検出ソフトウエアである「CXR-AID」を導入することになっており、結節・腫瘤、浸潤影(肺炎などで見られる広がりのある陰影)、気胸(肺の表面に穴があいて、肺と胸壁の間に空気が漏れて肺が潰れた状態)の3種類の病変が検出可能とされています。

富士フィルム「CXR-AID」のカタログより引用
ベイフロントクリニック南船橋で導入します

実際のデモでは、パッと見てわかる結節影から、わかりにくい結節影までいろいろありました。私自身は約40年間呼吸器の診療を専門にやって毎日胸部レントゲン画像を読んできましたが、それでも悩むケースは時々ありますので、日々見ていない医師ではさらに悩むことが多いと予想されます。自治体で行う肺がん検診は一般の(専門でない)クリニックが主役ですので、正常か異常かの判断に迷う場合には見落としを防ぐために「要精密検査」の判定が付けられてしまいます。二次検診でこれら「要精密検査」の判定の患者さんが日々受診されますが、どこを異常と判定したのかわからない場合が非常に多く、しかし「要精密検査」の場合にはCTを実施し、自治体へ結果を報告する必要があり、「CTで異常なし」の報告を行っている毎日です。一次検診は自治体の公費でまかなわれますが、二次検診は保険診療ですので患者さんの負担も生じますし、社会資源も利用します。これら画像診断へのAI導入を各国で推進しようとしているのは、社会資源の利用の抑制につなげたいということが前提になっているのは間違いないですね。

さて続いてAI問診に関して触れます。日本国内からの研究報告があります。2020年に報告された、AI問診を活用することで患者の待ち時間が短縮されるかどうかを検証した研究です。
2017年4月から2020年4月を対象として、日本の地域病院の一般内科外来を予約なしで受診した患者さんを対象とし2019年4月のAI問診が導入された前後で待ち時間を比較したものです。対象となった患者さんは21,615 件でAI 問診導入後の待ち時間中央値は74.4分、導入前 は74.3分で差はありませんでした。 またAI問診導入後の診察時間の中央値は6.0分で、導入前の5.7 分よりわずかですが有意に長くなりました。「有意」の意味については以前の統計についてのブログで解説しましたのでご覧になってください(2023年5月28日)。この研究でのAIによる自動問診システムが多くの医療機関で導入されている業界大手のものですが、予約なしで一般内科外来を受診する患者さんの待ち時間は短縮されず、導入後は若干の診察時間の増加、つまり患者さんが診察室で診察する医師と対面している時間が0.3分=18秒ほど長くなったという結果でした。(Yukinori Haradaら. JMIR Med Inform. 2020 Aug; 8(8): e21056)現在はそれから3年以上が経過しているので、AI問診は改良されている可能性があります。この研究では待ち時間や診察室にいる時間を評価項目にしていますが、AI問診に寄せられる期待としては、このほかに専門外の病気など不得意分野での問診での聞き落としや見落としの減少、ゴールとしての正しい診断へ結びつけるという質的な改善が想定されます。外来を受診した患者さんの主訴(受診動機)をもとにしての、それからの深掘りの問診をAIが行うことは確かに多くの枝分かれした問診から病気の絞り込みにつながる重要なプロセスです。受診前にそれをwebで行って、受診時にはすでに病気の診断が付いているという状況にはまだなっていないようです。日常診療で私たちはそれを行っていますが、例えば紙の問診票に書かれていないことを聴き出すことや、ふと漏らした患者さんの何気ない言葉が診断の糸口になることは少なくなく、AIが対面での問診に取って代わるのはまだかなり先になりそうな印象です。

実際にAI問診ではなくweb問診を導入しているクリニックも増えていますが、導入した先輩からはweb問診をあまりに作り込んで問診項目が多すぎると嫌われるとも伺っています。私自身はワープロのタイピング入力が苦手で電子カルテのテキスト入力が遅いということもあり、web問診の導入を予定しています。予約時あるいは待合室で患者様が問診に入力をしていただくと、それが電子カルテにテキストとして転記されているweb問診システムはまさに端末の画面ではなく患者さんと向き合う時間を長くするために有用と考えます。そこから深掘りの問診をして行くことができますよね。
AIを診療現場に導入することで患者さんと向き合う時間をより多く取ることにつながり、また画像診断の精度の向上することで患者さんの満足度アップにもつながると期待しています。

クリニックが入るモールの名前が決まりました~ランニングと骨折

1週間目に三井不動産ニュースリリースで南船橋エリアの玄関口となるライフスタイル型商業施設「三井ショッピングパーク ららテラスTOKYO-BAY」に名称決定、2023年11月開業予定、一部店舗を先行発表、8月より店舗求人サイト開設予定の公式発表がありました。
本計画地はJR京葉線武蔵野線「南船橋」駅前の利便性の高い立地で、JR京葉線、JR武蔵野線京成電鉄(「船橋競馬場」駅)の2駅3路線が利用可能。三井不動産グループが管理・運営する「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY」や、現在建設中の大型多目的アリーナ「(仮称)LaLa arena TOKYO-BAY」(2024年春開業予定)にも近接していることを謳っています。
 

三井不動産のプレスリリースより

LaLa arena TOKYO-BAYは今度のバスケットボールワールドカップの日本チームの司令塔 富樫勇樹選手が所属するBリーグ千葉ジェッツの本拠地になります。私はスポーツはもっぱらジムでトレッドミルの上を走るとかその後少し筋トレをする程度で、鴨川のK総合病院に勤務していた時は、病院の体育館にあるジムでトレッドミルの上を走っていました。このときは年間に1,000キロメートルを超える距離を走っていたため疲労骨折を起こして、K総合病院退職の3ヶ月前に手術を受けました。

右第3中足骨骨折の術前術後

 現在は、ランニングも週に1回くらいしかジムに行けず1回に12キロ程度を走る程度のため、年間600キロ程度の走行です。スポーツ観戦はもっぱらテレビで見る程度で、たとえばワールドカップの時期になるとにわかサッカーファンやラグビーファンになったり、WBCの時期にはにわか野球ファンになったり、これっていうわけではありません。バスケットボールはスピードと躍動感が半端なく、何よりも攻守がめまぐるしく入れ替わり点数がポンポン入るのが興奮しますよね。それにしてもあれだけの運動量で骨折しないのはすごいです。今度はLaLa arena TOKYO-BAYのすぐ近くのクリニックでの開業になるので、バスケットボールを是非とも生で観てみたいと思います。 

三井不動産のプレスリリースより

ららテラスTOKYO-BAYに正式名称が決まったので、イメージパースもららテラスのロゴが入ったものに変わっています。

三井不動産のプレスリリースより

ベイフロントクリニック南船橋はこの2階に入ります。

クリニックの名称に「ベイ」を入れてより一体感が出たかなとかっていに思っています。ららテラスTOKYO-BAYのグランドオープンの時期もほぼ決まったようなので、それに合わせて内覧会、さらに診療開始となる予定です。まだまだ開院するために決めなければならないことが多く、それに追われている状況ですが、少しずつ進んできていることを実感します。

Web講演会で講演しました

2023年6月30日にGSK Asthma Web Seminar で最新の喘息治療updateー ICS/LABAから一歩進んだトリプル治療 ーというタイトルで講演を行いました。今回はバイオ製剤のお話ではなく吸入ステロイド(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)+長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)の合剤による気管支喘息治療のお話です。

以前のブログでも気管支喘息は気管支に起きた慢性の炎症であるという話をしました。炎症のために気管支が過敏になって刺激に対して咳が出たり、気管支が狭くなったり(これを気道攣縮といいます)します。気管支が狭くなるとそこを空気が通るときにゼーゼーヒューヒュー音がします。この音を喘鳴(ぜんめい)と言います。この気道攣縮がおさまると喘鳴は聞こえなくなります。つまり喘息は気管支が狭くなったり広がったりする可逆的な症状を特徴とする病気です。一方で気管支は長く炎症が続くと気管支が狭い状態のまま広がらない状況になってしまい可逆的な病気になってしまいます。この非可逆的な状態になるといつも喘鳴が聞こえる様になってしまいます。喘息の治療はこのような非可逆的なzと様態にならないようにすることと、可逆的な気道攣縮を予防するために炎症を抑える吸入ステロイド(ICS)が治療の中心です。また喘息症状を和らげるために気管支を広げる気管支拡張薬も一緒に使用します。長時間効果が続く気管支拡張薬には交感神経刺激薬(LABA;ラバと読みます)と副交感神経遮断薬(LAMA;ラマと読みます)がありますが、ICSとLABAが一緒になっている合剤(ICS/LABA)で治療を始めるのが一般的です。大分前に書きましたが、喘息診療の実践的なガイドラインであるPGAM(ピーガム)ではICS/LABAで治療を始めて、効果がある場合に喘息と診断するといった治療的診断を推奨しています。

というのは気管支喘息は極めてバリエーションが多くで診断基準が未だにないためです。喘息の発作は夜間に起きやすく、症状がある時(発作時)と無症状の時(安定期)があるように症状が変動します。そして夜間から早朝にかけて症状が出やすいことが知られています。咳は反射ですので意識的に我慢することができません。夜間は自律神経は交感神経よりも副交感神経が優勢になることは以前から知られていましたが、咳反射も副交感神経が関係していることがわかっていますので、喘息治療にも副交感神経遮断薬が積極的に用いられる様になってきました。2020年からLAMAがICS/LABAと合わさっているトリプル製剤(ICS/LABA/LAMA)が喘息治療にも適応となったために、このトリプル製剤をどのような場面で使うのがよいのかと言うことを講演では話しました。気道分泌(痰)も副交感神経が関係しているので痰の多い喘息患者様にもLAMAの効果が期待されています。講演ではトリプル製剤の治療効果に関しての大規模臨床試験であるCAPTAINトライアルの結果を紹介しましたが、PGAMで提唱されている中等量のICSを含むLABAとの合剤で喘息症状を抑えられていない患者さんではLAMAとの合剤へ変更すると呼吸機能、喘息症状、喘息発作回数すべてがよくなったことが示されていました。
 

今日の喘息診療では治療に関連する背景(トリータブルトレイツ)を考えて必要な患者さんに必要な薬を届けるというのが基本ポリシーですので、中用量ICS/LABAでコントロールが不良の場合にすべてLAMAを併用するのではなく、ICS(吸入ステロイド)を増量するという手もあります。どのような患者でLAMAを併用すべき、あるいはICSを増量すべきかということも、このCAPTAINトライアルの後解析でわかってきたので、それについても紹介させていただきました。喘息はバリエーションが多いので、1人1人の患者さんと向き合って最適の治療を実践できるように日々考えながら苦闘しながら診療を行っています。

本を書くこと~出版の裏側

呼吸器専門医Aは今までいろいろと本を書いてきました。内容から言うと呼吸器の専門書で、読者対象としては研修医から呼吸器の専門医資格取得を目指すような若手医師、あるいは呼吸器診療も行うプライマリケアの医師向けの書籍が主体です。ずっと取り組んできた若手医師を対象とした教育の一環です。もちろん病院で診療を通じての教育の方が効果があることは間違いないですが、例えば初期研修医対象だと、呼吸器内科へローテーションで回ってきても期間は1ヶ月程度ですし、直接指導する後期研修医と一緒の時間が長く、初期研修医と向き合う時間は長くありません。

それは鴨川にあるK総合病院のような人気のある研修病院ほど顕著です。書籍執筆は言ってみれば不特定多数を対象とした教育です。一般の読者を対象とするものではないために、出版部数は限られていますが、読んでくれる読者のためにどれも力を入れて書きました。


これらの書籍は執筆の依頼を出版社から頂いて書きます。自分で企画を出版社へ持ち込んで出版に漕ぎ着けるといった性格のものではありません。執筆依頼を頂いてもすぐに執筆できるのではなく、どのような内容で書くのか項目立て、章立ての企画を提案し出版社の編集会議の俎上に乗せてゴーサインが出てから作業に取りかかります。


自分1人が書く単著や複数の執筆者による分担執筆があり、単行本や雑誌の特集企画などいろいろあります。単著はすべてを自分で書くため執筆ペースを調整できるというメリットがありますが、診療や教育、研究など他の仕事の合間に行うために時間を如何に確保するかが鍵になります。もちろん出版社から締め切りは提示されているので、締め切り間際になると売れっ子小説家のように担当者から催促が繰り返し来ます。また脱稿してもそれで完成ではなく、出版社側のチェックや疑義照会があり、さらに校正、索引の作成、装丁(カバーデザイン)の決定など多くの関門が待ち構えています。このために書籍として完成し上梓に至ったときには達成感もひとしおです。

呼吸器専門医Aが執筆した書籍(単著と企画編集したものを含むAの名前が表紙にあるもの)

一方で分担執筆の企画は大変な作業で、項目や章立てはもちろんのこと、その項目を誰に執筆してもらうのかも決める必要があり、執筆者リストを含めて出版社の編集会議にかけられます。この場合には誰に依頼するのかと言うことが鍵になります。もちろん各項目を得意とする人に依頼をするので、どこの施設のどの先生が何を得意としているのかを知っている必要があり、学会活動などでアンテナを張っておくことはもちろん、頼んで断られないように面識を持っておくことも必要です。近隣の先生だけでなく、日本中の先生と知り合いになっている必要があるために、こういった分担執筆の企画、割り振りができる人というのはどうしても限られます。そう書くとやはり狭い世界なのかも知れません。

依頼はきちんと締め切りを守っていただける先生に頼まなければならず、筆が進まない先生にお願いしてしまった場合には、こちらが出版社の担当者になった気分で催促を行わなければなりません。あまりに遅く、未着手の先生には執筆をお断りすることも考えなければならず、断るか待つか出版社との板挟みでかなりのストレスです。以前に私が企画編集した単行本では、いつまでも書いていただけない先生がいて、それでも問い合わせると「書きます」と繰り返し返事が来て、断るに断れないし、すでに締め切り通りに脱稿してくださった先生からは「一体いつになったら上梓されるんだ!」というお叱りを頂き、結局出版予定から1年以上ずれ込んで、多くの先生に平謝りに謝ったという思い出したくない黒歴史もあります。

本を書くと言うことは、内容が古いものにならないようにたくさん勉強し文献を読んで調べて、最新の知識を仕入理論武装しなければならないので、自分にとっても大変勉強になるために依頼されたら断らないことをポリシーにしてきました。これも自分にとってかけがえのない財産です。開業するということでしばらくは執筆業からは遠ざかることになりますが、今後はこのブログのように開業医の立場でまた執筆に携わって行けたらなあと考えています。